[代表質問]令和5年6月定例議会
1.奈良県中央卸売市場の再整備について
奈良県中央卸売市場の再整備について、これまでの整備計画を再検討するに至った理由と、今後、市場施設の再整備にどのような方針で取り組んでいくのか、併せて伺いたい。
(知事答弁)
市場の再整備は、多額の事業費を投じる事業であり、将来にわたって県財政の負担となるため、予算執行査定の対象としました。
まず市場の再整備のうち、元々の市場機能を有する部分であるBtoBエリアの老朽化が進んでいることは議員ご指摘のとおりです。現在も県民の台所として、県内生鮮食料品の流通を支えていることから早急に建て替えが必要と認識しています。
しかし、時代の流れとともに、食料品流通の構造は変化しており、市場の取扱高は減少傾向にあります。そのため、施設整備にあたっては、こうした時代の変化に対応するとともに、適正な施設規模について、改めて市場事業者と協議し、精査する必要があると考えています。
具体的には、再整備に伴い使用料が上がることが予想されるため、市場事業者に対し、再整備後の使用料でも引き続きこの市場を利用するかどうかといったヒアリングを行ったうえで、適正な施設規模を改めて検討してまいります。
次に、直接消費者に販売するBtoCエリアについては、民間で実施できることはできるだけ民間で実施するという官民の役割分担の考え方から、民間事業者において、独立採算制による賑わい創出ができるかどうかを確認したいと考えています。
そうした観点から、民間事業者に対し、現在の基本方針を前提とせず、どのような賑わい創出が民間事業者の費用負担でできるかについて、改めてヒアリングを行ってまいります。
市場事業者とBtoCエリアに進出を希望する民間事業者に対するヒアリングの結果を踏まえて、現在の基本方針の内容を見直し、新たな市場再整備について、早急に考え方を示していきたいと考えています。
<更 問>
BtoCエリアの整備に意欲的な民間事業者がいた場合、知事としてはBtoCエリアの整備を進める意向があるのか。
(知事答弁)
民間事業者が、自らの費用負担で、消費者に対する販売やサービス提供を行う施設を建設し、運営するということであれば、県として積極的にその協議に応じたいと考えています。
2.県と市町村の協働によるまちづくりについて
県と市町村が連携し、地域の活性化につながるまちづくりを積極的に推進する必要があると考えるが、知事の所見を伺いたい。また、現在、取組が進められている「近鉄郡山駅周辺地区のまちづくり」について、知事の考えや今後の方向性について伺いたい。
(知事答弁)
奈良県の人口は急激に減少し、高齢化も進んでいることを背景として、安心で快適な生活環境の実現をすることが重要と認識しています。県管理施設の改修や県有地の活用などの県事業と市町村のまちづくりを一体的に検討することにより、効率的なまちづくりが期待できると考え、その考え方が県と合致する市町村との間で、まちづくりに関する連携協定を、現在、県内の27市町村と締結し、55地区において、協働でまちづくりに取り組んでいるところです。
この協定では、地域の活力の維持・向上や、持続可能で効率的な行財政運営を目的として、ハード整備の分野では市町村負担額の4分の1、ソフト事業の分野では市町村負担額の2分の1を県が財政支援を行うことを基本としています。
本県の人口は平成11年を契機に減少に転じ、高齢化と人口減少が急速に進む傾向にあります。また、その動向は今後加速する見込みであり、これらの状況を踏まえると市町村と連携したまちづくりにおいても、直面する諸課題に市町村と今後ともしっかりと連携してまいりたいと考えています。
現在の近鉄郡山駅前は、極めて狭いスペースに自動車、自転車、歩行者が錯綜し、大変危険な状況であるとともに、駅とバス乗り場が離れており、乗換が大変不便であるという課題を抱えていることは私もよく認識をしています。
近鉄大和郡山駅のような県内主要駅においてこのような状況が長年続いているということは大きな問題であると認識しており、安全性や利便性の確保を早急に図っていくことが重要であると考えています。
この解決のため、先ほどご指摘のありましたまちづくり連携協定の枠組みに基づき、県と大和郡山市で順次協定を結んできているところです。
そして、具体的な取組といたしましては、近鉄も交えた協議を進め、まず現駅舎を北側に移設し、踏切を通らずにアクセス可能な橋上駅舎とすることを予定しています。また、駅舎移設に併せて、東西自由通路・駅前広場の整備・バスターミナルの拡張等も実施する計画です。こうした安全かつ利便性の高い駅周辺整備を進めることについて三者で合意をいたしまして、本年2月に基本協定を締結したところです。この協定に基づきまして、近鉄郡山駅周辺の整備については計画通り、協定通り着実に実施していきます。
また、今年度より、大和郡山市が、工事着手に向けた用地測量や地質調査を開始する予定と聞いております。県といたしましても、移設に伴うまちづくりに関するセミナーを開催する予定です。
このように、奈良県・大和郡山市・近鉄の三者で、令和12年度の新駅舎供用開始を目指しまして、連携、協力して取り組んでいきます。
3.子ども医療費助成について
今年8月までには県内全市町村において、子ども医療費助成の対象が高校生世代まで拡大される予定であり、県もそれに伴う経費の2分の1を負担する方針と聞いているが、更なる子育て支援のため自動償還方式を現物給付方式に改めるとともに、県内全市町村で子ども医療費助成の完全無償化を目指すべきと考えるがどうか。
(知事答弁)
近年、少子化が加速している中、政府は、我が国の存立に関わる危機として、今月13日に「子ども未来戦略方針」を閣議決定しました。本県は、合計特殊出生率が全国平均を下回っており、少子化対策・子育て支援が、最重要課題の一つであるため、私は、子ども医療費助成制度の充実を公約に掲げ、6月補正予算案に計上したところです。
現物給付方式の導入については、県内全市町村が令和6年8月から小・中学生まで拡大されるに当たり、県は、現物給付化により受診頻度が増えることに伴う医療費の自己負担分の増加分と国民健康保険の国庫減額調整措置にかかる補てん分の2分の1を負担する方針です。
さらに、高校生世代までの拡大についても全市町村が合意された場合には、県は、国の「こども未来戦略方針」進捗の動向を踏まえ、小・中学生と同様の支援について検討したいと考えております。
完全無償化については、大半の市町村が定額一部負担金を設定しており、これは頻回受診により医療費の増加が見込まれることによります。また、完全無償化した場合、市町村の負担増は相当規模に上ることから、今後の対応について市町村と意見交換を行っていきたいと考えております。
子ども医療費助成は、子育てを支える施策の中でも県民の皆様から評価をいただいており、今後もその充実に向け、実施主体である市町村と意見交換を重ね、子育てのしやすい奈良県を実現してまいります。
4.高齢者に対する移動の確保について
高齢者の運転免許証の自主返納が進む中、生活における移動の確保が喫緊の課題と考えるが、現状と今後の取組について伺いたい。
(知事答弁)
公共交通は、県民の通勤・通学、買い物・通院といった日常生活の移動を支える必要不可欠なサービスです。
高齢者の免許返納が本県でも進む中、自家用車に頼らずとも、必要なときに快適に移動できる公共交通サービスを維持・確保することは、重要な政策課題と認識しています。
県では、議員提案で平成25年に制定された「奈良県公共交通基本条例」に基づき、平成28年に「奈良県公共交通基本計画」を策定し、令和4年に改定したところです。
公共交通サービスの維持・充実のため、県、市町村、事業者、住民の方々といった関係者が主体的に参画し、取り組んでいくことが重要との基本認識の下、この計画に基づき様々な取組を推進してきたところです。
主な取り組みとしては、広域バス路線について、関係者間で構成する会議で、利用者増や、より効率的な運営方法について議論し改善策を実施した上で、県としても運行費の一部を補助しています。
また、高齢者、障害者の方々、乳幼児を連れた利用者が利用しやすいノンステップバスの導入に対する補助を実施しており、直近10年間で累計62台に対して補助してきました。
市町村における取組への支援としては、コミュニティバスやデマンドタクシーの導入等、住民に身近な移動手段を確保する取組みについて、計画策定や実証運行に対し、支援をしているところです。
例えば、平群町が実施している、運転免許証を返納した高齢者等を対象としたデマンドタクシーの実証運行費用を支援しています。
今後も、県内各地で実施される意欲的な取組に対して、積極的に支援してまいる所存です。
さらに、デジタル技術を活用した交通サービスの導入に向けた新たな取組として、今年度、県南部東部地域において、明日香村では、観光シーズンに合わせ、鉄道駅と村内観光施設を結ぶ自動運転バスの実証運行をしようとしています。
また、宇陀市では、デマンド交通の予約と病院の診療予約を一括して行えるサービスの実証運用を予定しており、関係市村と協議を行っているところです。
この他、最近の燃料費高騰を踏まえた事業者に対する補助を、昨年度に引き続き実施するため、補正予算案に計上しているところです。
こうした取組により、将来にわたり地域の暮らしを支える公共交通サービスの構築を、県が先頭に立って進める所存です。
5.踏切内の安全対策について
視覚障害のある方が安全・安心に踏切を通行できるよう、誘導用ブロックの設置などの対策を、市町村と連携を図りながら早急かつ計画的に進める必要があると考えるがどうか。
(知事答弁)
昨年4月に大和郡山市内で、視覚障害者の方が踏切道内で列車と衝突され、お亡くなりになった事故が発生。お亡くなりになった方のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族に対して謹んでお悔やみを申し上げます。
視覚障害のある方が安全・安心に踏切道を通行できるよう取り組むことは行政、関係事業者の重要な責務です。
先日、橿原市内で開催された全国視覚障害者福祉大会に来賓として招かれ、取り組みの必要性を改めて認識しました。県としては、不幸な事故が2度と起きないよう取組を進めていくことを大会で申したところです。
国は昨年6月に、ガイドラインを改定し、多くの障害者等の移動が通常徒歩で行われている特定道路等において、踏切道内に誘導表示等を設けることが望ましいと明記されています。
県内では、踏切対策を円滑に進めることを目的として設立した「奈良県踏切道改良協議会合同会議」を活用し、特定道路における踏切道の誘導表示を優先的に進めていくことについて、近畿地方整備局、近畿運輸局、県、警察、関係市町村、鉄道事業者の間で合意形成しています。
一方で、国のガイドラインには、踏切道内の誘導表示にかかる構造や材質、狭い道路の誘導の在り方については、具体的な仕様等が示されず、今なお継続検討課題とされています。
このため、各踏切道の対策を進めるにあたっては、利用者の意見を伺うなどして取り組む必要があり、耐久性や事後評価を確認のうえ、「奈良県踏切道改良協議会合同会議」で情報共有したいと考えています。
県管理道路には、特定道路上の踏切道は7つあり、踏切道内及びその前後に歩道がある2カ所において、誘導表示設置に向けた関係者間協議を進めており、まとまり次第速やかに設置する方針です。残りの5カ所も、設置に向け検討を予定しています。さらに、特定道路以外で視覚障害者の利用が多いなど誘導表示設置のニーズがある踏切道についても取り組む方針です。市町村とは知見を共有し、設置に向けた技術的助言を予定しています。
6.学校給食費の無償化について
少子高齢化が進む中、子育て世代の負担軽減を図り子育てしやすい環境を整えるため、学校給食費の無償化を進めるべきと考えるが、今後どのように取り組むのか。
(教育長答弁)
学校給食の経費の負担について、学校給食法第11条では、必要な設備、施設に関する経費及び給食の運営に要する経費のうち、政令で定めるものは、義務教育諸学校設置者の負担となっているが、それ以外の主に給食費に関するものは、保護者の負担と規定しています。
この規定は、設置者の判断によって給食費の補助を否定するものではなく、議員お述べのとおり、施策として以前から給食費の完全無償化に取り組んでいる8自治体以外にも、コロナ禍において時限的に県内多くの市町村で地方創生臨時交付金を活用した給食費の無償化を実施したことは把握しています。
無償化をはじめ、学校給食の支援の継続については、国全体として負担の在り方を抜本的に整理した上で、国の責任において財源を含めた具体的な施策を講じるよう、本年2月10日に全国都道府県教育委員会連合会から国へ要望したところです。
本年6月に政府が策定した「こども未来戦略方針」においては、無償化を実施する自治体における取組実態や成果課題の調査等を行うこととされています。
県教育委員会としては、今後国の動向を注視しながら、国が実施する全国ベースでの学校給食の実態調査や無償化の実現に向けての具体的方策に速やかに対応したいと考えています。
7.起業家教育について
子どもたちの「生きる力」として、他者と協働しながら新しい価値を創造する力などを育成するためには、起業家教育が重要と考えるが、現状と今後の方向性について伺いたい。
(教育長答弁)
アントレプレナーシップ(起業家精神) は、起業する人に特有の資質であると誤解されがちですが、新しい事業を創出し、リスクに挑戦する姿勢であり、あらゆる職業で求められる行動能力と捉えています。
県教育委員会では、平成26年度から、高校生に「チャレンジ精神、創造力、コミュニケーション能力」などアントレプレナーシップに必要な能力を培う取組を実施し、地域を担う人材育成を推進しています。
同取組では、県内の起業経験者による出前講義や販売実習、県立磯城野高校や県立商業高校における模擬株式会社の設立・運営を行うなど、生徒間で豊かな人間関係を構築し、勤労観・職業観を醸成に役立てています。
加えて、令和4年度からイノベーションにより人々の生活や社会を変革するために新たな価値を生み出す姿勢や発想・能力を有する人材の育成を目的として、県内高校生を公募し、スタートアッププログラムを開始しています。
同プログラムでは、2日間で起業家との対話等により会社を設立するワークショップを実施しています。参加生徒からは、「起業の手順について学ぶことができた。」や「参加することで、自分を変えるきっかけになった。」などの感想がありました。受講後、ビジネスコンテストにおいて、入賞する生徒も出ています。
国のスタートアップ育成5か年計画では、アントレプレナー教育の強化も掲げていることを踏まえ、本年度も高校生のスタートアッププログラムを継続いたします。また、それとは別に新たにデジタル人材に求められるマインドを育成するプログラムを策定し、その中でアントレプレナー教育の更なる充実を図る所存です。